#008「経理もITスキルが必要」っていうけど、何をやればいいの?
こんにちは、西崎俊です。
このニュースレター「FP&A Camp」では、管理会計やFP&Aについて情報を発信しています。
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以前の記事「FP&Aに必要なスキル(スキルセット編)」では、FP&Aに必要なスキルセットとして、ERPの知識/BIの知識をあげました。
今回は、FP&Aが業務で使用するITツールというテーマで、以下の4つのカテゴリでさらに詳細にみていきます。
柱となる4つのツール
- ERPやCRM、HRISなど基幹システム
- BIツール
- EPMツール
- ワークフローやコミュニケーションツール、プロセス
周辺領域となるツール
製品例は海外の製品が多くなるのですがご容赦ください。
🏢ERPやCRM、HRISなど基幹システム
基幹システムは企業のコアな業務プロセスを支えるシステムで、各部門の情報を一元管理することができます。正確かつタイムリーなデータを提供することで、FP&A業務の品質と効率性を向上させることができます。
ひとくちに基幹システムといっても、会計システムから販売管理・生産管理・人事労務管理などさまざまな領域があり、一つの領域に特化した製品もあれば、全ての領域をカバーするシステムもあります。
FP&Aにおける使用方法としては、例えばERPからは売上や原価、経費などの実績データを取得し、予算や予測との差分分析を行ったり、CRMからは営業情報を取得して収益予測の精度を上げるなどの活用方法が考えられます。
今回の記事では詳細には取り上げませんが、いずれもFP&Aが業務を行うにあたっては欠かせないシステムとなっています。
グローバルではSAPやOracleがスタンダードですが、日本国内でも規模別・ソリューション別で多くの製品が発売されています。OBIC,富士通,JSOL,大塚商会などが伝統的に高いシェアを占めていますが、マネーフォワードやラクスなども中小企業向けを中心に存在感を伸ばしています。
代表的な製品
ERP (Enterprise Resource Planning)
SAP S/4HANA
Oracle ERP Cloud
Microsoft Dynamics 365 Finance & Operations
Intuit
CRM (Customer Relationship Management)
Salesforce
Microsoft Dynamics 365 Customer Engagement
HubSpot CRM
HRIS (Human Resource Information System)
Workday
ADP
Oracle HCM Cloud
「ERPの使用経験ってどういうこと?」という質問について、以下の記事で解説しています。
🚀EPMツール (Enterprise Performance Management)
EPMツールは、業績管理や予算策定、業績予測などのFP&A業務を支援するためのツールです。統合的な業績管理を実現し、業務の効率化と正確性の向上を図ることができます。
予算策定のプロセス管理、各部門からの予算データの収集や集計、業績予測の作成などの業務を行います。
予算策定は伝統的にExcelベースで行われることがほとんどでしたが、
・バージョン管理ができない
・セキュリティの欠如
等の理由でExcelでの予算管理が限界を迎えてきています。
それらの問題に対処するために生まれたのがEPMや、FP&Aツールといわれる製品群です。
これらの計画ツールについても、ERPに対応するように、会計・販売管理・人事管理など様々な要素が含まれており、
・どのようなディメンションがモデルに含まれるか?
・週、月、四半期などの単位で計画できるか?
・カスタムロールアップや階層を使用して計画できるか?
など様々な機能が必要になってくる領域です。予算策定のプロセスは企業によって異なるため、ツール選び・導入は非常に難しいですね。
このカテゴリのリーダーはAnaplanでしょう。
国内でもLogras(ログラス)が注目を集めています。
代表的な製品
Oracle EPM
Anaplan
Wrokday Adaptive Planning
SAP BPC (Business Planning and Consolidation)
📊BIツール(ダッシュボード・レポーティング)
BIツールは、大量のデータから有益な情報を抽出し、可視化するツールです。
FP&A業務では、データの分析やダッシュボードの作成を行い、経営層に対してインサイトを提供することが求められます。
従来こういった業務は表計算ソフトを使用して数値をまとめ、プレゼンテーション資料を作成して行うのが主流でした。今でもそのような仕事は普通にあります。
しかし、データが大容量化する一方でより迅速な意思決定も求められるようになると、こういった作業環境では時間的な制約がボトルネックになってきました。
BIツールは大量のデータを瞬時に可視化し、データのドリルダウンやWhat-IF分析が可能なダッシュボードの作成を可能にします。
これらのBIツールは基幹システムを含む様々なデータソースと接続できますが、大規模なデータを保有する環境では、合理的なレポート作成のためにETLプロセスを正しく設計して、FP&AチームがRDBのデータを活用しやすくしておくデータガバナンスも大変重要です。
データ分析は準備が9割という格言もあるほどです。
そのため、データベースに精通したエンジニアがファイナンス組織に所属していることも、大事な要素です。
代表的な製品
Tableau
Power BI (Microsoft)
QlikView/Qlik Sense
Looker
💬ワークフローやコミュニケーションツール、文書管理、タスク管理など
FP&A業務は多くの部門や人々とのコミュニケーションが必要です。
効率的なコミュニケーションを実現するために、ワークフローやコミュニケーションツールの導入は不可欠です。
例えば、ワークフローツールを使用して予算申請や承認のプロセスを自動化したり、メールに頼らないモダンなコミュニケーションツールを使用して関連部門や経営層との情報共有をスムーズに行う必要があります。
また、予算策定のプロセスは長く多人数が関わるプロジェクトになるため、マネージャーはタスク管理・プロジェクトマネジメントツールの必要性を感じることもあると思います。
代表的な製品
ワークフロー・タスク管理・プロジェクト管理
Asana
Trello
Wrike
文書管理
JIRA (Atlassian)
Microsoft SharePoint
コミュニケーション
Microsoft Teams
Zoom
Slack
🌵余談1 その他のツール
他にも、FP&Aの仕事で扱うことになる可能性がある周辺領域のツールはたくさんありますね。
経理領域になる 自動消込ツール、請求管理システム、またBlacklineなどの決算支援システム。
Snowflake,Databricksなどの データウェアハウス、分析プラットフォーム。
などなど会社やその人の職責によって扱うツールは幅広くなります。
ただ、これらのツールは全員が必須で使うとも限らないため、今回の記事からは除外しました。また機会があれば別の記事で紹介したいと思います。
🤖余談2 RPAが入っていない理由
単純に、私個人がRPAにあまり良い印象をもっていないからです。
各システムからデータをダウンロードして、レポート作って…みたいな作業、Excel帳票やマクロは適切なSaaSソリューションに置き換えられるものが多いはずです。
データ分析についてはETLを最適化してデータベースを作りBIで分析が理想のはずです。
他にも、正しくAPI連携でデータをやり取りするのが理想だったり。
ニッチな領域でも、正しくベンダー選定を行えば最適化なテックスタックを構築することができるはずです。
RPAのメリットは、現状のやり方を変えずに前例踏襲になりますし、低コストで自動化ができることです。そのせいで、すぐに結果が欲しい幹部に好まれるんですよね。
これは何もせずに生産性の悪い作業を続けるよりはずっといいでしょう。
ただ、私からするとどうしても、産みの苦しみを避けて本質的な効率化から目を背けている感じがしてしまうのです。
コストをかけない人的、システム的コストを避け続けた結果、もう誰もメンテナンスができないハウルの動く城が出来上がってしまうケース、多いのではないでしょうか。
以上、FP&Aが仕事で使うツールについてざっと解説しました。
ERPの使用経験ってどういうこと?などの個別のトピックについても、今後記事を充実させていきたいと思いますのでぜひメールでの更新通知も受け取ってくださいね。
それでは!
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