#015「SAPってどうやって勉強したらいいの?」そんな経理や営業事務の疑問にお答えします!
こんにちは、西崎俊です。
このニュースレター「FP&A Camp」では、管理会計やFP&Aについて情報を発信しています。
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前回の記事は、経理やFP&Aの求人でよく見る「SAPの使用経験」ってどういうこと?というテーマでした。
今回のテーマは、「SAPの勉強方法」です。
SAPのようなERPシステムには教科書のようなものがなく、実務で扱ったことのある人にしかわからない存在と思われがちです。
これ、私も色んな人から聞かれます。私自身がERPに強めのFP&Aを自称していて、実際同僚や知り合いから、「西崎さん、どうやってそんなにSAPに詳しくなったの?」と聞かれることがよくあります。
私は、もちろん実務経験もありますが、ちゃんと勉強しました。
SAPはしっかり仕組みを抑えて、会計知識を紐づけて勉強することで、より本質的な理解につながります。
ということで今回は、どうやってERP(SAP)を勉強するか?というテーマでお話ししたいと思います。
👻SAPの学習に関する誤解
まず、そもそもSAPのユーザーにとってSAPを学ぶとはどういうことなのか?
どう言う状態になったらOKなのか?これは前回の記事で解説しています。
じゃあどうやったらそこに辿り着けるの?
それにお答えする前に。
SAPの学習については、いろんな誤解があると思っていますので、少しその認識についてお話しさせてください。
SAPは勉強しても意味ない
よく、SAPは企業ごとにカスタマイズされているから他社では通用しないとも言われますが、そんなことはありません。
確かに、会社によってカスタマイズされたトランザクション・レポートがあったり、使用しているモジュールが違ったりしています。
しかし、基本的な概念や仕組みは同じですし、近年ではなるべくカスタマイズを最小に抑えて、標準で使用するというのがトレンドになってきています。
SAPの研修は高額
SAPには、SAP社が提供する講座があるのですが、これは基本的に開発者やコンサルタント向けで、かつ数十万円から数百万円と高額です。
ただ、これはあくまでSAP認定コンサル資格取得やABAPでの開発者を目指すIT企業のエンジニア、コンサルタント向けのものです。
経理や事務の現場でSAPを使用する一般ユーザーには基本的には高額な研修も資格も不要と思います。
SAPに関する書籍は少ない
これは半分正解ですが半分間違いですね。日本語の書籍は少ない、というのが現状だと思います。
SAPを独学で勉強しようとすると、この書籍に辿り着く人が多いようです。
図解入門 よくわかる最新SAPの導入と運用
もちろん、SAPの全体像や仕組みを理解するのには、日本語では唯一の選択肢であることは間違い無いのですが、基本的には新人のSAPコンサルタント向けという本で、実務ベースでSAPを触っている人にとっては内容が薄く感じることも多いでしょう。
でも、用語がよくわからないし、とっつきにくい。。。
結局、会社で前任者が作ってくれたマニュアルが一番の情報源になっている。
こんな状況の人が多いのではないかと思っています。
そんな人のために少しでも役に立てばと、以下では私も実際に行っている実務者のためのリアルな勉強法を紹介します。
📖学習方法1 SAP Press公式の教科書を利用する
あまり知られていないのですが、SAPには公式のSAP Pressという教科書が存在します。
私は突っ込んだ知識はこのSAP Pressで勉強しました。
紙の本はサイズが大きめで重いので、電子書籍のみ購入をおすすめします。
Deep Lに貼り付けて翻訳してしまえば、そんなに読むのも苦では無いですよ。
特にオススメなのは以下の3冊です。
とりあえず持っていて損がないのはこちらのトランザクションコード一覧です。
全部で500ページあって、SAPの全トランザクションと、何をするためのものなのか?説明が書いてあります。
リファレンス的に検索するのはもちろん、
パラパラめくるだけでも、「へー、こんな機能もあるんだ」とか参考になることが多いです。
2️⃣ Financial Accounting with SAP S/4HANA: Business User Guide
FIモジュールの機能、使い方、仕組みが網羅されているSAP Pressの中でも最もポピュラーな本のひとつです。
タイトルに「ビジネスユーザーガイド」とあるだけに、開発者ではなく実務者向けの内容となっています。
上記はS/4 HANA向けの内容になっていますので、
S/4 HANAではなく R3の情報が欲しい場合は、下記を購入しましょう。
Financial Accounting with SAP: Business User Guide
3️⃣ Controlling with SAP S/4HANA: Business User Guide
こちらはCOモジュール版のビジネスユーザーガイドです。
どんなマスタが存在するか、配賦キーの設定、マテリアルコストマネジメントなど、管理会計領域のトピックとトランザクション、ユースケースが網羅されています。
これも、S/4 HANAではなく R3の情報が欲しい場合は、
下記が該当します。
Controlling with SAP: Business User Guide
以上の3冊で、ほとんどの人にとって必要な知識はカバーされていると思います。
概念の話から実務上の処理方法まで、スクリーンショットで解説されているので、この3冊の内容を知っていれば経理・FP&AにとってのSAPの知識としては十分でしょう。
SAP Pressには他モジュールの本や、会計基準ごとの各論のトピックの本もたくさんあります。
みなさんそれぞれ自分の持ち場の業務で詳しく知りたいトピックがあるでしょうから、興味のあるやつを買いましょう。
Business User Guideシリーズは、SD、MMのProcurementもあります。
SCM、購買、営業事務などの部署で受発注業務や購買業務をされている人は、
自分が関わる分野がある人はぜひ買ってみてください。きっと役に立つはずです。
私の場合は以下の2冊を購入しました。いずれも専門的な内容で、SAPだけでなく会計の概念やプロセスの話にも及んでおり、一部しか読めまてませんが総合的な知識がかなり身につきました。
4️⃣SAP Revenue Accounting and Reporting and IFRS 15
5年ほど前に購入しました。新収益認識基準に対応したSAPの機能はもちろん、新会計基準についての概念も説明されている本です。収益認識にかかる実務の話も綺麗にまとまっていて、システム本なのに下手な会計の専門書よりもわかりやすいです。
この本のいいところはたくさんの企業のシナリオが仮定されていて、それぞれのユースケースでのSAP設定が解説されているところです。
収益認識って企業のビジネスモデルによって計上の仕組みも色々なパターンがあるので、pay per useの場合はこう使う、リベートがある場合はどうする、など奥が深いです。
もうすでに新収益認識への移行は完了していると思いますが、読み物としても面白いため今からでもおすすめできます。
追記:上記は現在絶版のようです。こちらが後継かな?
5️⃣Profitability Analysis with SAP S/4HANA
こちらは収益性管理(Profitability Analysis)の本です。
CO-PAと言われるモジュールで、企業によっては導入していない場合もあるかもしれません。
私はCO-PAについては実務で触れていたのですが、収益性管理 はS/4 HANAになってけっこう変わったので、参考書として購入しました。
知っている人は少ないので、ライバルに差をつけられることうけあいです。
ただ、専門書だけあってそれなりの値段しますので、会社で図書費などが経費で落とせる方はぜひ申請チャレンジしてみてください。
🧑🏼💻学習方法2 UdemyでSAPのコースを受講する
UdemyやCourseraなどのオンライン学習プラットフォームには、SAP有識者による講座が存在します。
SAP公式ではありませんが、ほとんど講座がSAPの実務経験者によるものであり、信頼できる内容です。
実際の現場で経験のある講師が作っている講座だけあって、理論だけでなく現実のモデルに即したものが多いので、
「すぐに使える知識が欲しい、他の社員に差をつけたい!」
という意欲的なあなたにとっては、受講して損はないと思います。
UdemyにはSAPで検索すると2000以上のコースがヒットします。
その多くがインド人エンジニアによるものなので、英語に癖があり聞き取りづらいこともあるのですが、内容はわかりやすいです。
(外資大企業で働くなら、高い確率でインド人と働くことになるので慣れておいて損はありません。)
以下、私が購入したおすすめのコースです。
(1) SAP FICO (Finance & Controlling ) Simplified For Beginners
FICO全般の機能について合計80時間もの動画で一から十まで解説されています。
初心者向けではありますが、ボリュームは多いです。
最初のパートだけ見たら、あとは興味があるところだけ視聴するのも良いでしょう。
(2)SAP FICO (Financial Accounting & Management Accounting)
こちらはFICOについてより詳しく解説しています。
開発者向けの部分と、エンドユーザー向けの部分がありますので、自分に関係ありそうなところだけ聞くのが良さそうです。
(3)
簿記をSAPで学ぼう1~知っておくべき財務会計のしくみ~
簿記をSAPで学ぼう2 ~簿記の演習問題を解いて財務会計(SAP FI)を身につける~
こちらは日本語のコースです。
簿記要素は基礎の部分だけなので、経理の方はちょっと内容に物足りなさを感じるかもしれませんが、
簿記をSAPで学ぶというコンセプトなので、初めてSAPに触る方が会計を通じてシステムを理解する際には良い教材になると思います。
ちなみにオンライン学習プラットフォームにはCourseraもあります。
CourseraのコースはSAP公式アカウントがあり、9個コースがあるのですが、ほとんどコンサル向けのようです。
Coursera : SAP講座
🔓学習方法3 OpenSAP.comを利用する
OpenSAP.comは、SAP社がHasso Plattner Instituteと協同で開発したオンライン型の無料学習プラットフォームです。
全て無料で受講できるのが特徴です。
SAPの使い方そのものというよりは、SAPを含むテクノロジーや企業をとりまく環境に関して、様々なトピックを学習できるという趣向が強いです。
また学べる範囲はあくまで基礎知識程度となります。
例えばこちらのコース。
Climate Action with SAP Sustainability Footprint Management
テクニカルというよりは、Thought Leadershipのコンテンツですね。
SAPに関しては、最新の技術に関するものが多く、
「SAP使ったら、こんなに効率的なビジネス環境が構築できるよ!」
というような啓蒙系のコンテンツになっています。
Insights into Selected Logistics Innovations in SAP S/4HANA
これらはSAP社がマーケティング戦略の一環として行なっているものですね。
この取り組み自体は素晴らしいと思うのですが、実務者が学ぶにはSAP PressやUdemyの方が向いていそうです。
もちろん、無料で提供されているコンテンツとは思えないほど、内容自体は素晴らしいので、興味があるトピックがあれば視聴して見るのはいかがでしょうか。
👩🏻🏫学習方法4 ストアカ講座(神田ITスクール)を受講する
上で紹介したのは書籍やオンラインでの学習でした。オンラインコースは自分の好きな時に気軽に受けられるのがメリットですよね。
逆に大きなデメリットになるのが、「気軽に質問ができない」という事です。
特にSAPみたいなシステムだと、やっぱり座って話を聞いているだけだと頭に入って来ないですし、
わからないことがあった時に質問ができないと挫折してしまいます。
そんな方におすすめしたいのが、神田ITスクールが提供しているスSAP入門講座です。
初心者向け 「すっきりわかる!SAP FI」入門講座
東京都の会場で3人〜8人ほどの少人数で開催されるので、気になっている点はなんでも気軽に聞くことができます。
SAPがインストールされたPCを用意してもらえるので、実際に手を動かして学べるのがポイント高いです。
🔭学習方法5 自分の会社のSAPを探索してみる
もしあなたが現在の職場でSAPを使っているとすれば、これが一番の学習法です。
もちろん、SAPに変な変更を加えないように自己責任で行ってくださいね。でも、大抵の場合はSAPには正しく権限設定されており、簡単にデータを削除したりはできなくなっていますので、そこまで心配する必要はないです。万が一誤った処理をしてしまっても、修正できますしね。
もちろん、繁忙期は避けて、メインの業務に差し障りがない程度に行ってみてくださいね。
この「自社SAP探索」においては、自分の会計知識や、簿記・会計の勉強と並行しながら行うのがおすすめです。
例えばどうするのか。
あなたが今簿記の勉強をしていて、固定資産と減価償却の章を勉強しているとしましょう。
教科書では、減価償却の計算方法には生産高比例法や定額法、2倍定率法などさまざまなものがあり、
償却費を計上する際の貸方は、固定資産の金額を直接減額するのではなく、
下記のように減価償却累計額の勘定を使って計上するのだ、ということを学びました。
Dr. 減価償却費 1,000円 / Cr. 減価償却累計額 1,000円
- この償却の仕訳は、あなたの会社ではどうやってSAP上に登録されているでしょうか?
- 固定資産の簿価と耐用年数を確認するにはどのトランザクションコードを使えばいいでしょうか?
- 機械、減価償却費、減価償却累計額のそれぞれの勘定コードは?
- 償却費の計算方法は何法が設定されていますか?
- 固定資産の資産クラスはどのようなものが設定されていますか?
- 償却費はコストセンターに配賦されているでしょうか?
- 固定資産の一覧をリスト化して、コストセンターごと、簿価順、耐用年数順にまとめたレポートを作成することはできますか?
- この固定資産を発注した際の発注伝票を確認できますか?どのベンダーからいつ購入したのでしょうか?
- 固定資産が耐用年数を迎えた場合、SAP上ではどのような処理が行われていますか?
- 固定資産を売却したようなケースはありますか?その場合どんな処理が行われていますか?
などなど…固定資産ひとつをとっても、SAP上では様々な設定や処理が行われているのがわかると思います。
これを、新しく習った勘定科目や仕訳など、自分が知らない領域に対して繰り返していくだけで、SAPの知識はどんどん深まります。
そして、自然と 会計知識←→SAP知識 が繋がっていきます。
トランザクションコードがわからなければ、冒頭で紹介したSAPの公式本で調べましょう。
あなたの会社のSAPの権限設定によって、確認できない項目もあるかもしれません。
それはしかたがないことですので、諦めて書籍やUdemyで確認しておくといいですね。
結局、机上での学習をするよりも自分の会社の数値の方が興味が湧きますし、頭にも入ってきやすいんですよね。
🐰まとめ
システム屋さんもSAPに関わる人はとても給与水準が高いです。
SAPなどERPの仕組みは複雑で難しいからです。
だからこそ、経理や営業事務などのユーザーがERPを理解することはとても大事です。
しかし、部長クラスの人でさえ、正しく全体像を理解している人は非常に少ないです。
経理の部署と関係ないところで、受発注などの業務を行ったことにより自動的に仕訳が切られるので、どのようなフローでGL勘定が生成されているのかわかりにくく、全体像の理解があまり進まないのだと思います。
会社の規模が大きくなるほどその傾向は増します。
また自動仕訳できられる仕訳の量はボリュームが多いですし、中間勘定・仮勘定などが使われていて、簿記で習った仕訳やと異なっているので、どんなロジックで数字が計算されているのかパッとわかりにくいです。
でも、この経理外の業務のフローと自動仕訳のロジックをきちんとわかっていないと、ERPを本当に理解したとはいえません。
逆に、これらの仕組みがわかっている人はライバルと差別化できます。付加価値の高いDXプロジェクトにアサインしてもらえる可能性も高くなります。
自分には関係ない事と思っている人も一定数いますが、ERPに触れる環境にある人は、勉強しておいて絶対に損はないはずです!
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